ぐでぺんLIFE

私の頭の中の外部記録

社会人1年目で150万貯金した話

「勉強」という単語を聞くと、「学校の勉強」とか「資格の勉強」なんかの机に向かってペンとノートで問題集を解いて…なんてイメージがあった。私、勉強自体は好きな方で、受験数学とか化学とかかなり楽しめてやれてたと思う。実際学校での勉強の成績は良かった。  

でもそれだけでは生きていけなかった。学校の勉強はいくらできても、いざ実家を出ると決意した途端に、特に生活に関する、自分には出来ないことや分からないこと、しなければいけないこと、必要なスキル…そんなものが噴出して、むしろ生きていくために必要な基礎的なスキルの上に学校の勉強があったのだと、まだまだ自分に課題は山積みなんだと思い知らされた。

土台が安定していなければ、上に何を積み上げてもいつか崩れてしまう。そう思った。生きていくために就職先を探して、実家を出たのだ。自分の力不足で実家に戻る羽目になるなんて、たまったもんじゃない。 

自分の力で生きていく  

そんな境遇で、一番身になった勉強は「お金の勉強」だった。 

 

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初任給をもらう     

就職して初めて給与明細をもらった。アルバイトの時代には見たことがない数字がそこにはあった。住宅手当があるなんて、噂には聞いていたけど本当だったんだ…。同時にアルバイト時代には空白だったところにも数字が入っていた。年金、社会保険料、組合費、その他引去金…。

たくさんの得られる金額も初めてだったけれど、引かれる金額がこんなに多いのも初めてだった。

 

初任給15万、通勤手当、住宅手当ありで採用されても、実際にいくら振り込まれていくら使えるかなんて、明細をもらうまでは分からなかった。

 

初めてのお給料をで何を買うのか聞かれた。

「家賃と光熱費を払います…。」

それ以上は答えられなかった。

家賃と光熱費、食費、それからインターネット代。生活に必要なものにいくら払って、いくら手元に残って、そこから何を買おうかなんて考えられなかった。

私の答えは失笑を買った。

 

同期入社で新卒の人とか、転職してきた人は同じ質問に対して「親と外食に行きます」とか「ナノケアのドライヤーが欲しいです」と答えていて、実家暮らしで余裕がありそうで、とても羨ましかった。本音では外食やドライヤーよりも、就職しても住めるお家に生まれて、外食に連れて行ってあげたいと思える親のところに生まれたというところが一番羨ましかったのだけれども。

 

私には彼らが持っている実家という後ろ盾が無い。自分から捨ててしまった。いざという時に頼れるのは自分とお金だけ。それは嫌という程わかっている。

 

まとまった額の貯金が必要。できるだけ早く。

 

幸か不幸か子供の頃から節約節約お金お金お金とばっかり考えていて小学生にして既に金の亡者として出来上がっていた。あの頃はいかに親にお金をかけてもらうかだった。でも今度は自分で稼いだお金だ。自分でコントロールできるだけやりやすいはずだ。

  

手取り月15万のお給料からまとまった金額を貯金すべく勉強を始めた。

 

貯金のための勉強

はじめは何を読んだらいいのかわからなかった。ネットで検索しても年金の計算の仕方なんかは出てくるのに、生活費の計算の仕方は全く出てこない。たまに良さそうかな?と思う記事を見つけても主婦雑誌で持ち家ローン野菜は実家からもらって食費ダウン!みたいな記事で求めるものと余りにもかけ離れていた。

 

その時ふと、日経ウーマンの就職活動特別号が頭に浮かんだ。これを読み込んで、面接に挑んだのだ。あまりしてこなかった化粧も何が要るのかから載ってたし、面接マナーも「知らなかった…」と言って焦ることもなかった。日経ならきっとあるだろう、日経なら!日経平均株価とかよく聞くし!とあまりよく知らない日経に対して、驚くほど高い信頼を寄せてコンビニで日経ウーマンを買った。

日経ウーマンて、ウーマンてつくし実際お仕事メイクやファッションなんかの女性向けの記事もあるんだけど、男性にもめっちゃ役に立つよ!給与明細の見方や貯金の仕方、暮らしぶりやスキルアップの方法なんかも特集があって、地に足をつけつつ背伸びもできる。誰に聞けばいいのかわからない、リアルでは人に話しづらい話題が特集されていて、毎号楽しみだった。体感で半年〜1年で同じような特集が巡ります。大掃除なんかの季節もの以外は別ですが。今は日経ウーマンwebサイトは日経doorsにリニューアルしてます。

doors.nikkei.com

 

先取り貯蓄、やってみる

日経ウーマンは私の心にクリティカルヒットした。そんな中で推奨されていたのが先取り貯蓄。お給料から貯金を先に取っておいて、残金で生活する方法。特集記事を読み込んで、自分の生活に当てはめて書き出し、何ができるか考えて、実行に移す。それだけ。自分の生活に落とし込むのが難しかった。自分でも気がついてない出費がいろいろあった。

実際に書き出してみると、こんな感じ。 

社会人1年目手取り月15万円。

家賃   月25,000円

光熱費  月7,000円

携帯電話 月2,000円(ガラケー

食費   月10,000円

予備費   ???(鎮痛剤とか医療費とか)

 

よし!いけるな!!と思って月10万貯金することにしました…。

光熱費は季節変動あるので多めに取りました。足りなくて電気止まる方が嫌だ。携帯電話はガラケーのみ。大体月1500円代。たまに電話を使うとその分増額。それでも2000円に収まる感じの額。

服?近くのリサイクルショップで状態の良さそうなものを調達。コーディネートよりも暖かさ優先。余談だけど、リサイクルショップで服を買うのは難しいと思う。合わせるのが難しそうな柄ものとか、素材がちくちくするのとかが多かった。シンプルで合わせやすいのは着倒すから売らない。傍からみるとすごく奇妙な格好をしていたと思う。自分の趣味<<<<お金をとったのだから自業自得だけれど。おそらくファッションのレベルはお下がりを着ていた中学生の頃から抜けれていなかった。化粧はしなくて出勤しても誰も何も言わなかったので徐々にしなくなった。就職活動してた頃に買ったのを使い切ったらそれでも終わりみたいな。スキンケアも乾燥するのでユースキンを塗ってたぐらい。化粧に対するモチベもなにも無かったし、お金をかけないを優先順位第一位にしてた。視力が良くなくて見えてなかったので、自分はそれなりだと思っていた。だけどキレイになりたい願望はむちゃくちゃあった。かわいい同期の女性、めちゃめちゃ羨ましかった。

 

さて日頃の出費をどう抑えたのか。仕事と家との往復と家事と自炊で炊事。土日は家から出ないでインターネットざんまい。

コンビニには行かず、スーパーのみ。お惣菜も買わないで、自炊。お昼はお弁当。お弁当と言ってもおにぎりとか。ふりかけやお茶漬けの素を職場に置いておき、白米を持っていってそれでよし。お菓子はもらいもののみ。

給与として入ってくる額は毎月大きく変わらない。1〜2年目はさして残業ないし。となるとできるのは支出を抑えるのみ。

例えば映画1回1,800円、映画館に行くまでの交通費、そこに行くための服装。そういうことを考えると行く気になれなかった。

お金は使わなければ出て行かない。お金を使わないことに必死だった。素敵、欲しい、飲みたい、食べたい、快適、満たされたい…。すべての欲望と感情を抑圧して、すべてをお金を貯めるただ一点にのみ集約させた。

育った環境のおかげか、自分の欲望を抑え込むのは「できること」 だった。母親からされていたことを今度は自分で自分にするだけだった。すぐに適応できた。

夏の暑い日にペットボトルのお茶も買わない。そんな生活をしていた。

こわい。手元のお金がなくなるのがこわい。

自分のお給料を自分にかけることに罪悪感を、お財布からお金がなくなることに恐怖感を覚えるほどにストイックに生活した。でも我慢したらその分だけ増えて行く数字の通帳を見ていると、達成感と自信と安心感でほんのりと幸せだった。

 

そうこうして、1年耐えた。夏冬のボーナスは明細の金額に感動しつつも、全部貯金に回した。通帳の数字は150万円まで増えた。

翌年の4月。会社の方針で住居手当がなくなった。手取りが14万円になった。これは予想だにしない大打撃だった。なにせ手取りが1万円もへるのだ。さらに6月、住民税がやってきた。手取りは13万円になった。

日経ウーマンを読んで知識があったから住民税がくることには備えていたが、住居手当がなくなったのは痛かった。月の貯金額を8万円に下げて、楽しみもなくひっそりと家と職場を行き来した。ひたすらお金がかからないように。

そうした日々を過ごしているうちに、常に生活に疲れた雰囲気をまとってしまった。

手入れされていないひっつめ髪と化粧っ気のない顔、不満そうなへの字の口、開かない目。

楽しそうな話題はお金がかかる。同期に誘われる飲み会や遊びのお誘い、全部断った。実家暮らしの彼女たちが羨ましくて仕方がなかった。半ば強迫観念。自分を追い込み追い詰めた。私はこのまま楽しそうなこととは無縁の人生を、仕事と家の往復をしてお金のための人生を送るんだと諦めていた。

 

社会人2年目の11月だった。それまで住んでいたアパートの契約が来年1月で終了になる。そんな知らせが届いた。ルームシェアはそのまま解散。これからは1人で住まなくては。翌週、有給休暇をとり不動産屋に行き内見をした。いくつか家を見る中で、駅から近くて広めでバス・トイレ別でキッチンが充実していた物件がとても気に入った。月45,000円。手取りを考えるとこれでも厳しいが、見てきた中で広くてきれいで駅近で一番住みたいと思った物件だった。「家賃4万円なら即決する」と言うと、不動産屋は大家さんに電話をかけた。もうここにするつもりだったのに。はじめは難色を示したけれど、最終的には月4万円にしてくれた。家賃は手取りの1/3以下になった。ギリギリだけど。

それでも来年から住む場所がなくなるとなったときに、すぐに不動産屋に行って、物件を即決し、敷金礼金家賃2ヶ月分の初期費用25万の数字を見た時に、これなら払える…と安心できたのは、まぎれもなく社会人1年目の貯金があったからだった。

 

今度はお金を使ってみる

一人暮らしを初めてもう以前のように貯金には回せないなと思った。昇給でちょっと増えてたけど手取りは15万をきっていた。月の貯蓄額を5万円まで減らした。それでもまとまった家賃4万円、光熱費1万円。残りは必要なものに使おうと思った。食費、服飾、お菓子…。せっかくの一人暮らし、楽しみたいと思った。自分のために生きたい、自分のためにお給料を使おうと思った。

 

一番初めに買ったのはペットボトルのお茶。とても暑い日で、外出した帰りだった。エアコンの効いた店内で透明なドアの向こう側のペットボトルに手を伸ばす。お会計をして店を出てすぐに蓋を開けた。喉を通る冷たい感触は心地よかった。自宅で作ればお茶はタダみたいなものだけれど、自分を潤してくれるこの冷たさに、この状態で売ってくれることにお金を払っているのだなと思った。

食事は相変わらず自炊だけど。服はリサイクルショップを卒業し、地下街で買うようになった。新品に袖を通したのは久しぶりだ。枚数は少ないが本当に気に入った服を買い、着倒した。きちんと見える服装が好きなのもこの頃にようやく知った。自分のことなのに全く見えていなかった。

この頃から「何にお金を払っているか」を強く意識するようになった。駅から近くて広めのマンションに住めること家賃を、寒くても凍えないですむことに電気代・ガス代を、私を素敵に見せてくれる服に、お金を払っていた。意識が向くだけでしなくていい出費は減り、手元の買い物記録には買ってよかったの○が増えて、不要な出費はほとんどなくなった。支出自体は思っていたほど増えなかった。むしろ生活やものに対する満足感が上がっていった。もっと早くこっちにシフトすればよかった。そう思った。

 

歯列矯正をする

以前会社の先輩から歯列矯正しないの?した方が絶対いいと思うんだ」と言われた。

親知らずが生えた頃から歯並びがずれだしていて、口元も出っ張っていて自分の顔が好きじゃなかった。

歯列矯正ってものすごくお金がかかると思っていた。ネットで検索して出てきたのは、総額で100万円ほど。

総額約100万円。………。出せるじゃん…。

これが一番初めに思ったことだった。

高いとは思うけど、出せない額じゃない。それ以上にメリットがあるならば、それもいいかと思った。するかどうかすぐに決められなくて、悶々と考えていた。

 

歯列矯正をする。それは自分のために100万円という大金を使うこと。自分はそこまでする価値のある人間なの?自分が信じられない。自分で働いて貯めたお金は、まとまった額になってた。今ならできる。払える。自分のためにお金を使おう。そう決意した途端に涙が流れた。しゃっくりもひどかった。それでも自分で決めたのだ。勢いのままに矯正歯科に予約を入れ、抜歯のために仕事の調整をした。 

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心は死んでしまった

歯列矯正が終わった後、歯並びはきれいになったけれど自分自身はみすぼらしいままだった。せっかく変われると思ったのに。

身体を壊してしまい健康のために通っていスポーツジムに、素敵なバレエの先生がいた。その先生のようになりたいと思い、自分なりにいろいろ調べて、こうだと思う方法を実行に移した。

 

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お金に関しては貯金を崩さなければ、もうそれでいい。

かけた金額なりに得られるものがあれば上出来。むしろ少し値が張ってもいい、その分得られるものがあればそれでいい。そうでなければ勉強代。失敗した経験から学ぶこともある。そう思うと心が軽くなった。

 

カシウェアのひざ掛け、ウエッジウッドのマグカップ。どちらも安いものではないけれど、買って良かったと思っていて、今でもお気に入りだ。カシウェアは気に入っていて、余裕ができたときに買い足した。

身の回りを整えると今度は自分の中身が気になった。知識やスキルも身に付けたいとおもうようになった。自分のためにいろいろなことをしてみたくなった。美術館や展覧会にも行って、西洋絵画についての勉強もしてみた。自分で飛行機やホテルを手配して、海外旅行にも行ってみた。

全てが経験になっていった。いろいろなものや人に触れて、私の知らなかった文化があって、さまざまな価値観があったことを知った。海外旅行の際には奮発して宮殿を改装したホテルに泊まったこともある。

この頃には死んでいた心も息を吹き替えしていた。

 

自分から学びに行ったから身についた

社会人1年目から、収入のかなりの割合を貯金した。額にして150万円。実家暮らしもびっくりの68%。無理もしたし、職場と家との往復して、飲み会も遊びもほとんど断った。奢ってもらえる時は行ったけど。服も買わず楽しいこともせず娯楽はほぼインターネットだけ。お金のために生きて、心は死んでいた。実家暮らしで余裕のある同僚が心底羨ましかった。憧れだった。入社したての同期の飲み会とかキャンプとか行きたかった。貯金ができてから、取り戻すように一人旅をしてみたりもした。それでも新社会人のころの同期の旅行にはもう行くことはできない、過去には戻れない。

それでも今になって思うのは、月に10万円の貯金することで私は安心を買っていたのだ。おかげで引っ越しが必要な時に初期費用の工面に困らず、路頭に迷わなくてすんだのだ。家賃電気ガス水道、全部一度も滞りなく支払えたのだ。歯列矯正したいと思った時にすぐに行動に移せたのだ。貯金がなければ「歯列矯正」自体を諦めていた。

無理してでも作った貯金は安心と選択肢を与えてくれていた。その分、心は死んでいたけれど。

 

ある程度まとまった金額が手元にあると思うと安心できた。何かあってもとりあえずなんとかなると思える余裕ができた。

そう思えるようになって、初めて自分にお金を使おうと思えた。お金を使って得られる体験は自分を豊かにしてくれた。歯列矯正だけじゃない。美容院も洋服もコスメも本も映画も一人旅も。かけた金額以上に満足感ある経験を得られた。自分の意志で運転免許を取ると決め、自動車学校にも通った。全部自分で働いて稼いだお金だ。誰でもない自分で決めた。

 

どうやってお金を貯めればいいのか、学校では家庭科の時間にちょっと学習する程度だ。家庭でお小遣いで学ぶ機会があるかどうか、それすらも親の方針に左右される。

何にお金を使えばいいのか。これはもう、自分で考えるしかないのではとすら思う。

社会人になって2年、20代の人生でいい時期をお金のために心を殺して過ごしてしまったのは、もったいなかったと思っている。

でも社会人になって2年の間に、お金の貯め方を雑誌で読んで勉強して得た知識と、自分の生活に落とし込み自分で考え実行して、まとまった金額を貯めた経験は、私のお金に対する価値観の基礎として人生の血肉となり私を支えてくれている。

 

お金の使い方は今でも修行中だ。

どう使えばより良い経験ができるのか、何を買えば人生を豊かにしてくれるのか、買ったものは何をもたらしてくれるのか。学校ではなくて、本やツイッターやブログ記事からも学べることはたくさんある。「買ってよかったもの」「行ってよかったところ」の記事は知らなかった世界も、気づきもあるうえに読んでいて楽しい。

 

お金である程度の不幸の火の粉は振り払える。これは経験則で知っていたけど、やはりそうなんだと確信を得た。

 

株や投資よりももっと身近なお金の勉強は学校でできるものではないし、誰かに教えてもらえるものでもない。

だからこそ自分で調べ考え行動して学び、知識と経験を得て、それらを使えばもっと拡張できる。勉強と学びは背中を押してくれる追い風みたい。自分をより遠いところへ、高い方へ、行きたいと思う方へ押し上げてくれる。

 

学校で得るものだけでなくて、自分の力で学んで自分で考えて身につけるのは、いつからだって遅くはない。学びたいことも身につけたいスキルも、まだまだたくさんあるのだから。

 

 

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by ギノ

 

この記事が#学び応援WEEKで優秀賞をいただきました。ありがとうございます。

こちらの3年後の話も書きました。

 

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